まさかの展開でした。不思議な行動力と決断力を持ったピエロ。プロローグに出てきたピエロの少年がピエロだという予測は予想どおりでしたが、市長とピエロは同一ではないか，との予想がこうも鮮やかに外されるとは。謎解きもあって、一気に読み切りました。

嫁さんが図書館で借りてきていた、「横関大」のミステリ作品『ピエロがいる街』を拝借して読みました。 「横関大」の作品は、5年近く前に読んだデビュー作で江戸川乱歩賞受賞作の『再会』以来なので久しぶりですね。 -----story------------- 兜市役所の秘書課に勤務する「比南子」は困っていた。 スローガンに「開かれた市政、会いに行ける市長」を掲げる「宍戸市長」は、時間さえ空いていればどんな来客でも応対する。 兜市は製薬会社が工場を国外移転することが決まり、かつてない財政難に陥っていた。 市議会では大荒れが予想される中、今日も市民は「宍戸市長」に会いにくる。 ところ代わって兜市の駅前。 就職活動がうまくいかない「立花稜」がベンチに座って悩んでいると、顔に白粉を塗り、真っ赤な口紅を塗った「ピエロ」に話しかけられた。 「願いごとを一つ、言ってみろ」立ち去らない「ピエロ」に仕方なく就職したいと話すと、「稜」は「ピエロ」に雇われることになる。 「ピエロ」は毎晩困った市民を助けるために活動しており、「稜」はそれを手伝うが……。 兜市が抱える難題に次々と直面する「宍戸市長」と「ピエロ」。 「ピエロ」の正体が判明したとき、物語は鮮やかに反転する！ ----------------------- 人と人の出会いや繋がりを中心に据えたヒューマンドラマ色が強いハートウォーミングなミステリ作品でした…　「ピエロ」の正体が叙述トリックを利用して巧くミスリードさせられる展開となっており、真実が判明したときの驚きと感動が印象的な作品でした、、、 夜な夜な街に現れて人々の悩みを解決していく「ピエロ」、元証券会社社員で市の財政を立て直そうと邁進する「宍戸市長」、兜市役所の秘書課に勤務し「宍戸市長」の秘書を務める「今西比南子」、就職先が決まらない大学生でなりゆきから「ピエロ」の助手をすることになる「立花稜」、エリートから転落し毎朝新聞の兜支局に左遷された新聞記者「城島」、痴漢の冤罪で東京の病院を辞めることになった外科医「中路聡史」、市民病院の看護師「藤井」等々のさまざまな人々の動きを追う中で、迷子の犬捜しから、台風によりキャンプ中に孤立した子どもたちの救出、市民病院の外科医捜し、公費によるバリ島への個人旅行疑惑、財政難対策…　そして、b>「宍戸市長」の後援会長「沼田克義」の殺人事件まで、次々と襲いくる危機に「ピエロ」たちは立ち向かっていきます。 少々ムリな設定もありますが、スピーディーで常に読者に疑問を投げかけて興味を逸らさないテンポの良い展開で一気に読めました…　それにしてもね、やっぱ、自治体の首長って男性だという先入観があるので、完全に騙されちゃいました、、、 でも、愛する女性のために、ここまでできるって素晴らしいですよね、感動的でした…　エンディングの後日譚も、心がジーンとなる結末で良かったですね。イイお話でした。

町のために動いているという謎のピエロ。 その正体は、大きく予想を裏切ってくれた。 こういう裏切りは最高。 関わった色んな人に新しい道が開けている。 ありがとうピエロさん。