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地平線 フィクションの楽しみ

パトリック・モディアノ(著者), 小谷奈津子(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 水声社
発売年月日 2015/02/01
JAN 9784801000834

地平線

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2020/01/31

この作者の小説を読むのは初めてである。おもにパリを舞台に、追憶が語られ、古い時代の思慕が描かれる。そう書くと紋切り型のような感じもするのだが、さすがに文章そのものは非常にこなれていて、それでいてピンとこなかった、はっきり言えば自分の心に爪が立てられたと思えずにするすると読み終わっ...

この作者の小説を読むのは初めてである。おもにパリを舞台に、追憶が語られ、古い時代の思慕が描かれる。そう書くと紋切り型のような感じもするのだが、さすがに文章そのものは非常にこなれていて、それでいてピンとこなかった、はっきり言えば自分の心に爪が立てられたと思えずにするすると読み終わってしまったのは、この簡素に見える物語があんがいハイコンテクストに組み立てられているからではないかと思う。ここに描かれた20世紀中葉のパリや、その前の占領期のパリについて自分の知識ははなはだ貧しい。まだらに淡い知識こそあれ、とてもその街路や人の面構えを想像できるようなものではない。あんがいパリは遠いのである。 もっとも、この小説を読み解くに当たって必要なものはそういう歴史的な事物についての知識というよりは、この作者、モディアノの作品をいくつか読むことによって培われるような類いの、歴史に対してこの作者が抱くフェティッシュな感慨のようなものではないか。そうでなければ、たとえばボスマンスがマルガレットに対して抱く執拗な、そしてなんだかピントのずれた執心の理由はわかりそうにない。 ある種の探求の物語であるには違いない。小説の主題として、探求とはごくありふれたものの一つだし、その探求に寄り添って視線が誘導されもすれば物語を掘り進んでいくこともできるのだけれど、本作についてはなかなかそうならないのがもどかしかった。全体的に淡すぎるのかも知れない。人物も、言葉も、さらさらと流れていって、たまさか奇異な行動に走る人間がいてもそれすら性急に時間のとばりの向こう側に姿を隠してしまう。なんだか残念である。 作者は2014年のノーベル文学賞受賞者である。しかしこれは率直に言って、フランスに生まれフランス語でパリのことを書き続けた作者だからここまで評価されたのかも知れないなという印象を抱いた。なんだかんだ言って、今に至るまで文学とは結局のところヨーロッパのものなのだろう。

Posted by ブクログ

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