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商品レビュー
3.4
11件のお客様レビュー
人の美に対する情熱から人類の進化まで話が広がる連作短編集。 人工と天然の境界線が曖昧になる、気がする。
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上手い!小説としての組立て、文章の勢い、伏線の畳み方、どれをとっても納得の出来。書きたいことを書いているというパワーと読者にそのパワーをしっかり伝えるテクニックがばっちり噛み合わさっている傑作。 ラストは少々情熱あふれすぎの気配もあるけど、それがまた妙にエエ味付けになっていて。 人間の文明は同族の殺戮部分(戦争)以外を除いて「便利に・楽に・美しく」を目指して発展してきた一面はあると思う。 特に自分を美しく見せたいと言う欲求は、原初は生殖行動に起因するものであったかもしれないが、次第にその範ちゅうを外れ、それそのものが目的となって発展し再分化していってる様相もあり。 では、その欲求の行きつく先はどこなのか? 登場する企業「コスメディック ビッキー」の異常な発展、この企業の社長山田キクと専属モデル山田リル母娘の気持ち悪いまでのポジティブさ、とにかく怪しさ満載。 彼女らの言動一つ一つは決して間違ってないし、むしろ彼女らをとりまく周囲の方が嫉妬羨望の出る杭は打つ的なアカン感情を持って動いているはずやのに、こ新興宗教の勧誘員にも似た作られた感溢れる「満たされ」面した母娘に違和感感じまくり。 その違和感と怪しさが頂点に達してのラストで、前述の「溢れた情熱」が効いて、この作品をグイっと引き締めている。その他の伏線も「溢れた情熱」に絡めとられて収束する物語。これスゲーわ。 人生40年以上ヘタれで過ごしてきたので、せめてこれからはポジティブに生きたいし、倒れるなら前向いて倒れたいし、くじけてる暇あったらスクワットの一つでもしたいと思ってる俺なんだけど、この本を読んで「行き過ぎたポジティブって人間から離れていくのかもなぁ、ウチュージンになるのかなぁ」と思ってしまった。
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とてもまとまっていて、すごくよくできた連作短編集だと思います。 身近な化粧というものが主軸なこともあって、一気に読みました。 一つの化粧品会社が徐々に頭角を現して次第に世界を変えるまでになっていくのを、それぞれの短編のキーパーソンの目線で見つめていきます。 何がすごいって、話が進んで規模が大きくなるにつれて会社自体の胡散臭さがどんどん増していくこと。しかもそれは決して否定的には描かれません。非常に前向き。なのに空寒い。むしろ少し恐怖すら感じました。 物語は、作中のある人物のように、最後まで否定することを拒否して進みます。 読後は不思議な余韻と疑問に包まれました。 作中の人物たちが感じたように、彼女の本当の心の在り様、このまま人類はどこへいくのか。いい意味でもやもやすることばかりです。 ただ一つ間違いないのは、その執念に圧倒されたということ。 各伏線も含めて全体でまとまっていて、とてもきれいな小説だったと思います。 おもしろかった。
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