こちらは文庫本登録になっていますが、私が読んだのは単行本で2005年版。ということは好評だったということでしょうか。 1995年『いじわるな天使から聞いた不思議な話』を復刊して改題とのこと。 文庫本では『逆・サンタクロース』の挿絵ですが、単行本の表紙は、『ユニコーン・イン・シュガー・キューブ』からの挿絵で、一角獣の角砂糖をスプーンに載せて飲み物に入れる瞬間。 安西水丸さんの絵が、ブラックな物語にシュールな空気を漂わせる。 『宇宙船で女の子をいじめる方法』があまりにも、気味が悪いというか本を閉じたくなる。 少しずつ毒が減るというか慣れるというか読み進めると、いつものほむほむワールドに。 『ブラザー・タルトン』では、羽搏く真似をしてみたくなる。天使が出てくると思う女の子が好きなタイプかも。 『クロスワードの罠』ではブーフーウー、『眠りにつく図書室』ではメロンパン、『早撃ちキッド』ではフレンチクルーラーが出てきて、なんだか穂村さんだあとほっとする。 『セイレーンの叫び声』は、悲しいお話だけどとても魅かれる。 『ユニコーン・イン・シュガー・キューブ』の、世界を瞬間移動する跳ぶ様子の表現が、凄い。 『僕の夏休み』は、ああ、甘酸っぱい初恋の夏の想い出。自由研究に悩んだ学生時代の切なさを一緒に思いだした。タイジ君の自由研究も気になる。 大人の童話というけど、好き嫌い分かれるくらいインパクトのある作品。

帯には「リリカルで切ないおとなの童話」とある。 「リリカル」の意味はよくわからないけど、「切ない」のは何となくわかる。 わりとフリーダムに書かれているようで、どこか切なく悲しい。 一見子どもっぽいけれど、子どもが書いたらこんなに悲しくはならないんだろうと思う。 『超協力磁石』『ゼンマイ仕掛けの飼育係』が好き。

穂村弘さんのシニカルなお話集。 “いじわるな天使が、眠れない夜にやってきました。 頼みもしないのに不思議な話をして、あくびをひとつすると帰っていきました。” ハッとしたり、ゾッとしたり、でももっともだよなぁって思ったり、した。 帯に「大人の童話集」と書いてあったのがぴったり。 1つ目の「宇宙船で女の子をいじめる方法」はわたしの知り合いみたいだった。 絵を安西水丸さんが書いているのだけど、B&Bでこの本を購入するとき、レジで店員さんに「安西さん、こないだ亡くなられましたよね」と話しかけていただいて、さみしいけどあたたかい気持ちになった。