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小林秀雄の哲学 朝日新書

高橋昌一郎【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 朝日新聞出版
発売年月日 2013/09/13
JAN 9784022735263

小林秀雄の哲学

¥220

商品レビュー

3.5

5件のお客様レビュー

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2020/03/08
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 ある婦人が、遠い戦場で夫が戦死した同時刻に、夫の周囲の兵士の顔や塹壕の光景を夢見た。医者は、そのような夢の多くは現実とは無関係だが、偶然現実に対応する夢もあり、その一例だろうと答える。しかし、ベルグソンは、「精神感応と呼んでもいいような、未だはっきりとは知られない力によって、直接見たに違いない。そう仮定してみる方が、よほど自然だし、理にかなっている」と考える。  そして小林は、「経験科学と言う場合の経験というものは、科学者の経験であって、私達の経験ではない」という観点から、ベルグソンの考え方を擁護する。さらに小林は、ベルグソンと同じように「理智」によって「整理された世界」を拒否し、「世界が果して人間の生活信条になるか」という点だけが「興味をひく」ことを強調する。 《私がこうして話しているのは、極く普通な意味で理性的に話しているのですし、ベルグソンにしても、理性を傾けて説いているのです。けれども、これは科学的理性ではない。僕等の持って生れた理性です。科学は、この持って生れた理性というものに加工をほどこし、科学的方法とする。計量できる能力と、間違いなく働く智慧とは違いましょう。学問の種類は非常に多い。近代科学だけが学問ではない。その狭隘な方法だけでは、どうにもならぬ学問もある》(『信ずることとすること』1975年)。  ここまで書いてきて、どうしても不思議に思っていることがある。  それは、なぜ小林ほど知的に優れていて、感性の豊かな天才的人物が、現実の「科学」が解き明かしてきた「宇宙」や「生命」についての驚異的な発見や理論に興味を持たず、「オカルト」や「疑似科学」をナイーブに受け入れてしまうのか、ということである。  本書執筆に際して、改めて膨大な量の小林の全作品を読んでみたが、大自然や大宇宙に対する畏敬の念のようなものはどこにも感じられず、あるのは許なが許ながすべて、人間と人間の創作物への愛情か、自然といっても「花鳥風月」についての考察ばかりだった。  小林は、1961年4月にガガーリンが有人宇宙飛行を成功させた頃には『忠臣蔵』を書いていたし、1969年7月にアームストロングが月面に着陸した頃には『新宮殿と日本文化』について対談していた。おそらくこれが、興味のないことにはまったく目を向けない小林の「職人気質」なのであろう。  たしかに、文学や芸術もすばらしいが、なぜ小林が人間の「狭隘」な世界だけにしか興味を持たなったのか、私として、心底不思議に思う次第である。  逆に言えば、小林は自分の手の届く世界だけを愛し、その世界について真摯に考え続けたのである。晩年の小林がソクラテスについて語った言葉は、そのまま小林の人生「劇」を表現しようとしているようにも思える。 《どんな主義主張にも捕われず、ひたすら正しく考えようとしているこの人間には、他人の思わくなど気にしている科白は一つもないのだ。彼の表現は、驚くほどの率直と無私とに貫かれ、其処に躍動する一種のリズムが生れ、それが劇全体の運動を領している》(『本居宣長補記』1979年)。

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2017/04/08

小林秀雄の作品からの抜粋を通して、思索の本質に迫っていく。傾倒していた哲学者ベルグソンのスタイルとともに、論理よりも直観を重視する考え方を説明する。人生の軌跡を辿ることで人物像が浮き彫りにされるが、人間味に溢れた一面には危うさが同居している。妹の高見澤潤子が語っている'...

小林秀雄の作品からの抜粋を通して、思索の本質に迫っていく。傾倒していた哲学者ベルグソンのスタイルとともに、論理よりも直観を重視する考え方を説明する。人生の軌跡を辿ることで人物像が浮き彫りにされるが、人間味に溢れた一面には危うさが同居している。妹の高見澤潤子が語っている'兄 小林秀雄'からの引用は、人物像に彩りを添えている。一読したい本である。

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2014/08/17

著者は、論理学や数学の哲学の専門家ですが、長く小林秀雄の魅力に取り付かれてきたとのこと。本書は、小林の魅力を示す文章の抜粋と、評伝的な著者の解説文から成っています。 「様々なる意匠」を排して、自分自身の眼で物を見ることをめざした小林の批評眼を高く評価しながらも、科学的世界観に対...

著者は、論理学や数学の哲学の専門家ですが、長く小林秀雄の魅力に取り付かれてきたとのこと。本書は、小林の魅力を示す文章の抜粋と、評伝的な著者の解説文から成っています。 「様々なる意匠」を排して、自分自身の眼で物を見ることをめざした小林の批評眼を高く評価しながらも、科学的世界観に対する偏狭な立場に陥ってしまうところに、その危険性を指摘しています。 著者のような小林批判は、一つの立場ではありうると考えますが、なぜ著者が、それにも関わらず小林に惹かれるのか、という点が、今ひとつ腑に落ちませんでした。危険性が同時に魅力であるとはどういうことなのか、もう少し迫ってほしかったように思います。

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