女性作家の描く男性しかいない国の物語がある。これは、男性作家の描く女性しかいない国の物語……なのだが、うん。男性は男性が居ないことに耐えられないのかもしれない。 　序盤、物語の方向性がわかりづらく読みにくいが、話が展開すれば面白くどんどん読みやすくなる。翻訳モノのミステリのようである。 　序盤に書いた通り、これは男性作家による男性のいない世界での母たちの物語だ。この世界での男性の、男性性の薄さというか、影の薄さが想像を超える。この本に出てくる男性は、存在しなくても女性だけで世界が進んでいきそうな感じがすごい。女性作家が書いたら、男性性を強調しそうだし、男性への憎しみが出てしまいそうな気もする。この淡々とあるがままに物語を紡いでいくところがすごい。 　読み終えるとしみじみ面白い。自分では予測できない世界。こういう体験ができるから読書はやめられない。

女性のみで代々生殖が行われる独自の生態系のもと外界から隔絶された、年齢問わず母たちと娘たちが暮らす島に、自分たちとは違う男性が流れ着く。女性たちが生々しさよりも確かに生きている幻想的さで隅々まで行き届いた独特の濃密な世界にそれだけでうっとりした。男性たちが攻めて来る戦争が苦しい。結末は若干拍子抜け。

これもどうやら入手困難になりつつあるようだ。買えて良かった……とかいってたら文庫化されたりしてw（正直、ハヤカワの文庫化基準は長年読んでいてもよく解らないところがある）。 一読して感じたのは、矢張り、この人はジュブナイル向きの作家ではなかったのでは……ということだった。ポプラ文庫ピュアフルのシリーズではやや無理をしていたように感じられたところが、本書ではなくなっているし、読んでいて違和感もない。寡作でもいいので長く書き続けて欲しい。