1,800円以上の注文で送料無料

  • 中古
  • 書籍
  • 文庫

神々は渇く 岩波文庫

アナトール・フランス(著者), 大塚幸男(著者)

お気に入りに追加 お気に入り 追加 追加する お気に入りに追加 お気に入り 追加 追加する に追加 に追加する

定価 ¥1,122

¥990 定価より132円(11%)おトク

獲得ポイント9P

残り1点 ご注文はお早めに

発送時期 1~5日以内に発送

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 1996/10/01
JAN 9784003254332

神々は渇く

¥990

残り1点
ご注文はお早めに

カートに追加するカートにいれる

商品レビュー

4.5

7件のお客様レビュー

レビューを投稿

2020/06/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

フランス革命に続く恐怖政治時代のことは知らなかった。しかしこれが奇妙にも現在の状況に通じてしまうところが恐ろしい。まさに、歴史は繰り返す。何度でも、繰り返す。つまり、人間は過去に学ぶことができない、ということなのだろう。 正義は、時代によっても、状況によっても変わってくる、相対的なものだけれども、それぞれの人間がそれぞれに考えて、自分が正義だと信じることを実行する。ガムランも然り。しかし、どこまでも正義を貫こうとすることは、たいていの場合、悪に通じている。まるでメビウスの輪のように。アナトール・フランスが説くように、必要なのは正義ではなく、寛容なのだ。正義のために、誰かが排除されるようなら、それはもはや正義ではない。 そして、『神々は渇く』というタイトルが意味深だ。この世界に神がいるとしたならば、まるで神は血を求めているようだ。なぜ神は人間を創りたもうたのか。この、争いを好む人間を。まるで神は血に飢えているようではないか。 この物語の中で最も良識的だと思われるブロト・デ・ジレトは、声高に主張することはない。ただ身近な人間に、思うところを語るのみだ。最期の時においてさえ、静かにすべてを受け入れている。本当のことは、こうして失われていくのではないだろうか。間違いを主張する者の声ほど大きい。 そして、エロディはガムランの死後も、まるでガムランなど始めから存在しなかったかのように、日常に戻って行く。多分、これが一般市民の姿なのだろうけれども、そのなんと恐ろしいことか。否、人間はそうしてすべてを忘れて生きていくのだ。それが、人間なのだ。

Posted by ブクログ

2019/01/23

フランス大革命については、数多くの著作もあれば、度々人口に膾炙する出来事でもあるが、どうにも理解が進まない事柄の一つだった。 当然のこの出来事には歴史的意義、そして、事象として思想としての奥深さがあり、一様に理解できはしないが、あちこちに登場するため、自分の中に何かしらの取っ掛か...

フランス大革命については、数多くの著作もあれば、度々人口に膾炙する出来事でもあるが、どうにも理解が進まない事柄の一つだった。 当然のこの出来事には歴史的意義、そして、事象として思想としての奥深さがあり、一様に理解できはしないが、あちこちに登場するため、自分の中に何かしらの取っ掛かりを持ちたいとも思っていた。 訳者解説にあるように、著者Anatole Franceは、この歴史小説を執筆するにあたり、当時の事象を丹念に調べ上げたとのこと。また、著者の革命に対する確固たる眼差し、そこから導かれる普遍的な人間観が登場人物を通して、十二分に語られている。 読後、私も、ようやく足がかりを手に入れることができた。

Posted by ブクログ

2016/09/09

わたしはノンフィクションの本を読む。一般書にしろ、専門書にしろ、あまり文学作品を読まない。その少ない読書経験で、この作品を評価できるのかと問われれば自信がない。けれども、この作品に編み込まれたいくつかの文章にあたって、わたしは思わず天を仰いだ。なんと巧みな筆使いだろうと、感嘆せず...

わたしはノンフィクションの本を読む。一般書にしろ、専門書にしろ、あまり文学作品を読まない。その少ない読書経験で、この作品を評価できるのかと問われれば自信がない。けれども、この作品に編み込まれたいくつかの文章にあたって、わたしは思わず天を仰いだ。なんと巧みな筆使いだろうと、感嘆せずにはいられなかった。 たとえば、それは216頁にある。モーリス・ブロト・デ・ジレト、その名から察するとおり、革命前の彼は貴族だった。老齢の彼は革命ですべてを失い、物語の現在時制では「市民モーリス・ブロト」として、操り人形をつくっては売り、主人公エヴァリエスト・ガムランの住むボロのアパルトマンの屋根裏部屋で命をつないでいた。ときは恐怖政治、休む間もなくギロチンの刃が上下する「偉大な日々」にあって、その刃は次第に、この老ブロトにも向けられはじめる。 公安委員たちに追われていたのは、元貴族の老人だけではない。旧体制下にあっても大した権力など持たなかったであろう司祭ロングマールと、16歳の貧しい娼婦アテナイスも、身に覚えのない科で責められ、身を隠さなければならなかった。 ロングマール神父もアテナイスも、ブロトとなにか特別な関係があったわけではない。しかし、彼らは共通して公民証明書を持たなかった。ゆえに追われ、追われたがために出会い、ひとときをともにブロトの屋根裏部屋で過ごすこととなる。 ロングマール神父は、自分がどんな罪で告発されているのかわからないと語る。彼はたしかに妻帯せず、公民宣言もしなかったが、彼は信仰に正しく生きてきたと重ねる。 娼婦アテナイスは、「国王万歳!」と叫んだことにより、警察に追われる身となる。けれど彼女は、王党派だとか革命派だとか、そもそも政治的主義主張を持ちあわせてはおらず、「風俗の乱れ」を正そうと躍起になった政府のせいで商売があがったりとなったことへの不満から、革命派の思惑とは反対のことを叫んだだけに過ぎない。彼女はいう、「あの人たちは寄ってたかって、しがない者や、弱い者や、牛乳屋や、角屋や、水運び人や、洗濯女をいじめるんだわ。貧しい哀れな者たちを、全部、敵に廻さなくては気が済まないんだわ」。 ただでさえ狭い屋根裏部屋で、容疑者3名はめいめい床につく。ここからがアナトール・フランスの筆が冴える箇所である。老ブロトの若かりしころを照らした月の光が、彼の屋根裏部屋をふたたび射す。照らされた司祭と娼婦の眠る姿をみて、ブロトは思う。「これが、」つづけて「これが共和国の恐るべき敵だとは!」・・・。 月の光は、旧体制の象徴。それにしてもなんと憂いに満ちた、美しく、悲しい瞬間だろうか。物語を読みすすめようにも、作者がしつらえた完璧な舞台装置をまえに、思考が一旦停止してしまう。見事としか讃えようのない巧みさである。 物語は多重のメロディーから構成されているが、もっとも印象に残ったのは、この老ブロトに関わるそれだった。彼が処刑台にまで携えたルクレティウスの小型本が歌う。「われわれが生きることやめた暁には、何物もわれわれの心を動かすことはできないだろう。空や、大地や、海でさえも。空や、大地や、海も、その残骸をごっちゃに晒しているのみであろうから」。 彼は主人公ではないが、主人公のガムランと対をなす人物として、物語に深みを与える。最終局面に向かって、ガムランは破滅の道を邁進し、ブロトは威厳に満ちてギロチンの刃の前へ歩む。革命と旧体制、彼らはその代弁者かのような後ろ姿を最後に消える。筆者は、どちらがよいかわるいかという話をここでしたいのではないのだろうと思う。それが革命だったと、近代の鶏鳴はかくも血を必要としたのだということをここに記したのではなかろうか。 どんな真実よりも、物語は歴史を語る。

Posted by ブクログ

関連商品

最近チェックした商品