嫁さんが図書館で借りてきてくれた「沢木耕太郎」の短篇小説集『あなたがいる場所』を読みました。 最近、読んでいる書物の中では「沢木耕太郎」作品の比率が高いですね。 -----story------------- 理不尽なイジメに苦しむ少年が出会った、赤く染まる白い鳩。 家族の在り方に戸惑う少女を奮い立たせた、一台のピアノ。 事故で娘を亡くした父親の苦しみを断ち切らせた、片腕のない男。 バスを降りたその街で、人々は傷つき憂えながら、静かに痛みを超える。 九つの物語が呼び覚ます、あの日の記憶―。 深い孤独の底に一筋の光が差し込む、著者初の短編小説集。 ----------------------- 以下の九篇が収録されています。 　■銃を撃つ 　■迷子 　■虹の髪 　■ピアノのある場所 　■天使のおやつ 　■音符 　■白い鳩 　■自分の神様 　■クリスマス・プレゼント どこかで見たことがある風景や、いつか感じたことのある想い…　等が題材になっていて、リアリティを感じさせる作品群でしたね。 日常の風景がスケッチされたような、自然な感じがして、とても入り込みやすい内容、、、 当人には重大事でも、他人にとっては然程印象に残らない…　そんな、出来事にスポットを当て、劇的でも、ドラマチックでもなく、淡々と描かれていますが、逆にそれが印象に残る感じ。 「沢木耕太郎」による後記に「わかりやすい短篇小説を目指した」とあるように、とても読みやすく仕上がっており、ジュブナイル作品として扱えるような作品も幾つかあって、「沢木耕太郎」の目的は十分果たしている作品だと思います。 でも、「沢木耕太郎」に期待している内容とは、少し乖離がある感じがしましたね。 佳い作品なんですけどねぇ…　「沢木耕太郎」の真骨頂はドキュメンタリーやルポルタージュだと思うので、この作品は評価が難しいですねぇ。 そんな中、イチバン印象に残ったのは『虹の髪』。 中年男性が通勤バスで出会う、前の座席に座る女性、、、 太陽の光を受けてつややかに輝く、茶色がかった髪…　その髪にできる虹に魅入られ、密かな憧れを感じながら、バスでの乗り合わせを期待する日々。 そして、淡い恋を予感をさせるエンディング…　心がキュ～　っとなりましたね。 九篇中、四篇の主人公が子ども（うち二篇は少女）なのですが、揺れ動く微妙な想いが巧く表現されていて、自分の少年時代の気持ちを思い出しながら読むことができました。 物語なんですが、ドキュメンタリーっぽさを感じながら読めましたね。 そういう意味では、「沢木耕太郎」らしい作品なのかもしれませんねぇ。