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大気を変える錬金術
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大気を変える錬金術
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商品レビュー
4.4
11件のお客様レビュー
現在、ハーバー・ボッシュ法によってつくられる固定窒素の量は、自然に作られる量に匹敵する。畑にまいた化学肥料のうち、半分は作物の栄養になり、残りのほとんどは雨水や灌漑用水に溶けて水系に入る。ミシシッピ川の硝酸塩濃度は、1900年の4倍、ライン川はミシシッピ川の2倍になっている。汚染...
現在、ハーバー・ボッシュ法によってつくられる固定窒素の量は、自然に作られる量に匹敵する。畑にまいた化学肥料のうち、半分は作物の栄養になり、残りのほとんどは雨水や灌漑用水に溶けて水系に入る。ミシシッピ川の硝酸塩濃度は、1900年の4倍、ライン川はミシシッピ川の2倍になっている。汚染水に含まれる窒素は藻類や海草の成長を促し、それが進むと日光を遮って深部に生息する生物が死んでしまう。植物が死んで腐ると、水中の酸素が消費され、酸素濃度が下がると、水底に生息する動物が死んでしまう。バルト海のタラ漁は、1990年代に崩壊した。メキシコ湾の硝酸塩濃度は、過去40年で倍になった。ルイジアナ州沖のデッドゾーンでは水中植物が繁茂し、カニや魚が逃げ出し、すべての生態系が変化してしまった。世界中で150もの小さなデッドゾーンが見つかっている。大気汚染の原因となっている二酸化窒素の15~50%は、直接・間接を問わず、ハーバー・ボッシュ法の生成工場で発生している。大気中の窒素酸化物によって、酸性雨も生み出されれる。
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人類を食糧難から救ったと言われるハーバー・ボッシュ法。 いや、ハーバー・ボッシュ法がなかったら、戦争はもっと早く終わったとも。 空気中の窒素を無理矢理取り出したから土壌が汚染されているとも。 自然を利用して人類は発展したのか、未来の破滅を自分たちで早めているのか。
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巨大な世界人口を養うのに不可欠な空中窒素の固定法。科学技術史の極めて重要な一節を,じっくり読むことができる。その開発者である二人の数奇な運命にも注目。 善と悪,もし明快に二分できれば世界は単純だ。でも現実はそうでない。高温・高圧下で窒素と水素からアンモニアを合成するこの技術も...
巨大な世界人口を養うのに不可欠な空中窒素の固定法。科学技術史の極めて重要な一節を,じっくり読むことができる。その開発者である二人の数奇な運命にも注目。 善と悪,もし明快に二分できれば世界は単純だ。でも現実はそうでない。高温・高圧下で窒素と水素からアンモニアを合成するこの技術も,それに関わった科学者たちも,まさにその両面を持つ。人工肥料も食糧増産も環境破壊と不可分だし,ハーバーもボッシュも,決して善人とは言えない。 特にハーバーは権威主義者で,同じ化学者だった妻には家庭にこもるよう強要。自分で軍服をデザインしちゃうほどの軍国主義者で,戦争協力を惜しまず,毒ガス開発を主導。それが一因で妻は自殺。ユダヤ人としての過去を捨てて国家に尽くしたのに,結局はナチスの擡頭で祖国に留まることを断念。 ボッシュはハーバーの開発した合成法を使って,アンモニアを工業的に量産するためのプラント構築に大きく貢献した技術者。二人ともノーベル賞を授賞している。ボッシュは後に経営トップとなるが,世界恐慌,労働運動や工場の大爆発事故への対応などで苦慮。酒に逃げ,命を縮めたらしい。 ハーバー・ボッシュ法前史も面白い。本書は1898年のクルックスの食糧危機演説から書き起こされ,第一部では肥料や爆薬に欠かせなかった天然資源,グアノと硝石の物語が綴られる。劣悪な労働環境,資源を巡る争い,そして枯渇。資源のないドイツは,固定窒素の獲得に最も頭を悩ませていた。 後進国だったそのドイツで人類初の合成肥料が量産されたのは,実にドラマチックだ。一躍優位に立つも,あえなく敗戦,法外な賠償金を課され,ハイパーインフレ,虎の子の技術も流出,世界恐慌が襲い,そしてナチスの隆盛。二十世紀前半の歴史は本当に激動だ。科学技術もその中に組み込まれ,大きく社会を変えてきた。
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