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ソール・ベロー(著者), 大浦暁生(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 1971/03/30
JAN 9784102049013

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2018/03/22

私はサクセスストーリーや「努力が報われた」的な人生の成功話よりも、むしろ運にも見放され、やることなすこと全てが自分が想定しなかった裏目となるような失敗話を読みたいという思いが強い。なぜなら人生は成功よりもむしろ失敗にこそ学ぶべきものが多いと確信するから。 この物語の主人公は、大...

私はサクセスストーリーや「努力が報われた」的な人生の成功話よりも、むしろ運にも見放され、やることなすこと全てが自分が想定しなかった裏目となるような失敗話を読みたいという思いが強い。なぜなら人生は成功よりもむしろ失敗にこそ学ぶべきものが多いと確信するから。 この物語の主人公は、大学生の時に映画会社のスカウトの言葉に乗って家族の反対を押し切り大学を中退して映画スターを目指したところから「転落」が始まる。 その後、俳優として芽が出ないまま転職及び失職、結婚及び離婚、そして投資話に乗って残りの金銭的蓄えの喪失危機を迎え、家族、地位、仕事、お金という一定の人生経験を積んだ者なら多少は手に入れていると思われる社会的財産を根こそぎ失おうとしている。 ここで重要なのは、これらの「転落」がすべて主人公の意思によっていることだ。 主人公の意思が“偏向的に”強固なのは、ハリウッドを目指してから親にもらった名前“ウィルキー”を捨て、自分で名付けた名前“トミー”を名乗り続けていることでも伺える。 これによって主人公は自分の名前を自分の好きなように名乗れるという自己満足を得た代わりに、父親との友愛関係を決定的に歪めることになるのだが… 読み進めていくうちに、主人公がなぜ肉親などの自分に近しい者の意見や忠告を素直に聞かずに強硬に自己を主張するのに、自分に言い寄ってくるペテン師まがいの奴らの言うことを簡単に(安直に)自分に合うものと認めてしまうのか、理解が苦しくなったし、おそらくは誰もがそう感じることだろう。 しかしながら、自己矜持が強い者にとって、あるいは陥りやすい二律背反なのかもしれない。 だけど、自分で正しいと決めた道をひたすら進む人生が全て裏目となってしまった場合、自己決定した責任すべてを負わなければならないというのもかなり酷な話ではある。 これは優柔不断とか我儘とかの簡単なキーワードで括ってよい問題では決してないのではないか? そもそも、自分の好きなような生き方にしろ、我慢と忍従と迎合とで折り合いをつける人生にしろ、人生の成功や失敗はどちらの場合でもあり得ることだ。 この物語の主人公の生き方や考え方を否定し反面教師にして正反対に振舞えば成功が得られるって単純な話じゃないだろう。 ベローも逆戻りできない人生について「だったらどうすべきだったか」なんて描写はしていないし、そんな生き方の模範解答めいたものなんか、個々異なる人生にとって全く意味をなさない。 どうすべきかよりも、そうなってしまった場合にどう立ち向かえば人生の意味を勝ち得るかが大事であって、その正答は今まで誰も到達し得ていないと思うけど、ベローはラスト近くで主人公に意外とも思える感情の動きをさせ、その正答に近づこうとしているように思える。 ここで詳細を示すことはマナー違反だから、「涙」というキーワードのみを示すことにする。 正直、私はなぜ主人公が涙を流したのかが今もわからないし、涙を流したことで主人公の将来がどうなるのかなんて全く予想がつかない。 しかし1つ言えるのは、私がもし主人公と同じ境遇に陥った時、いや、同じ境遇に行かないまでも人生というものに強く打ちのめされた時には、はじめて主人公の涙の意味を合点し、そしてベローの深遠な描写力に心の底から感じ入ることになるに違いない。

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2017/07/15

互いが背負っているすべての歴史からおさらいしなければ、目の前にあるコップ一杯の水の話すらできない。それがニューヨーク。 ソール・ベローに触れるのははじめてだったが、まだこの作家の感覚を掴めないでいる。ヘルマン・ヘッセよりも現代的な分、話は想像しやすいけれど家族や配偶者との問題を出...

互いが背負っているすべての歴史からおさらいしなければ、目の前にあるコップ一杯の水の話すらできない。それがニューヨーク。 ソール・ベローに触れるのははじめてだったが、まだこの作家の感覚を掴めないでいる。ヘルマン・ヘッセよりも現代的な分、話は想像しやすいけれど家族や配偶者との問題を出されるとなかなか入り込めなくなる。 それでも貧乏出身なので哀れなぐらい金に困り果てて、他殺という手段で自殺したがる気持ちは痛いほど身に覚えがある。

Posted by ブクログ

2007/07/30

 ノーベル賞作家、ソール・ベローの中期の小説。  原題は、「Seizew the Day」で、もとは紀元前1世紀の詩人、ホラティウスの作品からの引用句(ラテン語で、Carpe Diem)。 <要約>  主人公のウィルヘルムは、妄想が得意な、いつまでも大人になりきれない44歳の無職...

 ノーベル賞作家、ソール・ベローの中期の小説。  原題は、「Seizew the Day」で、もとは紀元前1世紀の詩人、ホラティウスの作品からの引用句(ラテン語で、Carpe Diem)。 <要約>  主人公のウィルヘルムは、妄想が得意な、いつまでも大人になりきれない44歳の無職の男。解雇され、離婚して、子供が二人いるので教育費を元妻に請求され、しかたなく住まいとしているホテルからも宿泊費を請求され、そして残り少ない所持金も、騙され株の投資で失う。そんな散々な人生を送っている彼の、一日を追う。    要するに、44歳のニートの一日。  行き詰った人間の、一日を通して、今日の実用主義(プラグマティズム)世界における、人生の意味を問う。   <感想>  後半は、主人公の心理の動きが、彼の創造を通して巧みに描き出されており、あっという間に読めたが、前半がだるい、くどい。ニートの方が読めば、陰鬱な気持ちになること間違いない。  翻訳は少し古いので、「マスカラ」「かえで糖(メープルシロップ)」などに括弧書きで注があるのが新鮮。  評価は3.3

Posted by ブクログ

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