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抒情の奇妙な冒険
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抒情の奇妙な冒険
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商品レビュー
4
5件のお客様レビュー
サイエンス・フィクションの域を越えて、オカルト短歌に片足突っ込んでる素敵な歌人。 他人の記憶で詠まれたオーパーツ短歌。 この人を喰った雰囲気が癖になる。 タイトルはもちろんジョジョの奇妙な冒険のもじり。やっぱり人を喰ってる。
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短歌集である。冗談みたいなタイトルだが、まぁ真面目な短歌集である。「抒情」と冠しているだけあって、確かに抒情的な雰囲気漂う短歌が多数収録されている。 05年春から08年春まで、雑誌『S-Fマガジン』や『サイゾー』等に発表された笹公人氏の作品の中から250首を収める。 ...
短歌集である。冗談みたいなタイトルだが、まぁ真面目な短歌集である。「抒情」と冠しているだけあって、確かに抒情的な雰囲気漂う短歌が多数収録されている。 05年春から08年春まで、雑誌『S-Fマガジン』や『サイゾー』等に発表された笹公人氏の作品の中から250首を収める。 特徴的なのは、『S-Fマガジン』にも連載してたというだけあって、「SF短歌」とでもいうべき他に類を見ない独創的な短歌の数々だろう。SFであり抒情、なのだ。まさかハヤカワSFシリーズJコレクションで短歌集が出る日が来るとは。僕が個人的に一番好きなのは、 「もう誰もいない地球の凩(こがらし)に舞うポスターのアインシュタイン」 情景がとても好きだ。 そしてそんな短歌の他に、過去のSF作品にオマージュを捧げた短歌も収録されている。 「目覚めなさい埃まみれのサイボーグ 終わりの近づく都市(まち)で囁く」 「放射能の赤が世界を染める頃もムーピー・ゲームにふける人々」 「校長はロボットだった!真夜中の校舎を駆けるあの日の僕ら」 これらを読んで元ネタが判った人はかなりのSFマニア。それにしてもたった31文字の中で鮮やかにSF的情景を描き出してしまう笹氏の表現力はすごい。そして短歌の持つ可能性の豊かさを感じさせる。短歌といえば古臭いもの、という既成概念などどんどん壊していいのだ。 さらにもう一つ特徴的なのがそのノスタルジーだ。笹氏が、現在40代中盤にあたる世代を主人公(私)に設定したというだけあり、山口百恵やピンク・レディー、風雲たけし城などいかにもな記号がたくさん登場する。現在20代後半の僕にとっては全然世代じゃないので、まったくもって「他人のノスタルジイ」(本書帯より、山田太一氏)なわけだが、それでも妙な懐かしさを覚えるのは僕が笹氏のノスタルジーに捕らわれてしまったからだろうか。 「さめざめと友と泣きたる秘密基地 九九年に寿命さだめて」 笹氏の言葉が印象に残っている。《「八十年代は空っぽだった」と言う識者もいるが、僕にとってはとてもキラキラした時代だった》。 そう、「あのころ」を思い出す懐かしい気持ち。無知で、うぶで、こっ恥ずかしい時代だったけど、でも2度と戻ってはこない大切な時代だったのだ。 少しだけ不満なのは、とり・みき氏のイラスト。すごく雰囲気も出ているし、素晴らしくピッタリな内容ではあるのだけど、ただ、この短歌集全体で見ると、もっとイメージ的な抽象的なイラストがあっていたのではないかという気がする。 自分がとり・みき氏のファンでもあるだけにそう思ってしまうのだ。 短歌という形式で見事に過去と未来を描いてしまった笹公人氏。次なる冒険が楽しみだ。
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最後の解説を読んだら、本歌取りになっている歌などがよくわかる。なんで抒情?と思ったのだが、これは笹公人さんの奥底に渦巻く教養のマグマという感じか。自分が得たモノが笑顔に変わって湧き出てくる、これが抒情なのだとしたら、とてもいい本だと思う。
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