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火星のタイム・スリップ
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火星のタイム・スリップ
¥440
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商品レビュー
3.8
14件のお客様レビュー
電気羊だけがディックじゃない!と思わせる一作。 1964年発刊。その30年後の1994年の火星が舞台。そこには人類が植民していますが、まだ社会基盤が脆弱なために水不足に悩まされていたり、闇取引が横行している世界。他に、人類と共通の祖先である原住民のブリークマンがいたり、ある種の...
電気羊だけがディックじゃない!と思わせる一作。 1964年発刊。その30年後の1994年の火星が舞台。そこには人類が植民していますが、まだ社会基盤が脆弱なために水不足に悩まされていたり、闇取引が横行している世界。他に、人類と共通の祖先である原住民のブリークマンがいたり、ある種の精神疾患を持つ人間は未来を見る事ができるという設定がされています。 これを書いている現在、1994年からちょうど30年経っていますが、いまだに火星に人類が足跡を残していないのが面白いですね。 あらすじは、修理屋を営むミスター・イーのもと、雇われているジャック・ボーレンは、依頼のあるままにヘリコプターで飛び馳せる毎日。ある日、依頼元の酪農場に修理に向かう途中、国連の保護対象である原住民ブリークマンの遭難を知らされます。現場に急行すると、同じく知らせを聞いた火星で絶対的な権力を持つ水利組合長アーニー・コットと出会い、口論を経つつも技術力を買われたジャックはイーとの雇用契約を買い取られて、アーニーの下で働くことに。実はアーニーには、ある秘密の計画があり、ジャックは思わぬ事件に巻き込まれて行きます… タイトルにタイム・スリップと付いていますが、一般的に想像するものとは異なり、精神疾患者との時間認識の差異を利用して表現しています。そのため、途中でループしているような感覚や現実が崩壊していくような不思議な感覚を覚えます。いろいろな登場人物たちが出てきますが、それらがラストに向かって収斂していく後半は読み応えがあり、ラストのオチも好きですね。 ただ、こういう世界はリアルでは体験したくないです。健常者との時間感覚の差から、他人の喋っている言葉が理解できず「ガブル、ガブル、ガブル」としか聞こえないなんてね… ところで、作中にブルーノ・ワルター指揮『モーツァルト:交響曲第40番ト短調』が出てきて、久しぶりに第25番とのカップリングCDを聴いています。ディックも好きだったんだなと思いつつ、彼が聴いていたのはレコードだったと思うと羨ましい限りです。
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- ネタバレ
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1964年昨。読んでみた。分裂病は時間感覚が狂っているのだという仮説をもとに、自閉症の少年マンフレッド・スタイナーを中心に、火星の水利組合の代表、〝組合貴族〟のアーニー・コット、その愛人ドーリー、修理技術者ジャック・ポーレンが活躍する。物語は国連の火星投資の前に火星の土地(火星原住民ブリークマンの聖地)を買い占めようというアーニーの試みが中心となる。アーニーは分裂病(自閉症)には時間を自由に操作できると思っていて、マンフレッドの能力で大もうけをしようとするが失敗する。 このほかに、ジャックとドリーの不倫、ジャックの息子ドリーの通う火星の未来学校(ティーチャーマシンでアンドロイドで、エジソンやアリストテレスなど歴史上の人格が移植してある)の記述が興味深い。最後はポーレン夫妻がダブル不倫から家庭生活に安らぎを見いだすという内容。ループ小説のように同じ記述が何度もあらわれるが、精神病の内面世界と関係しているので、なんだかオドロドロしい。 例によってディックだから〝ニューエイジ〟風で、もうこういうのはいいかなと思う。傑作といえるかどうかは疑問。
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精神分裂病が引き起こす、時間感覚の崩壊。ディック作品おなじみ現実崩壊感の別バージョンな感じ。序盤では描写される火星開拓の行き詰まりがリアルに感じられて面白い。中盤は火星の住民たちと分裂病患者をとりまく人間ドラマが印象的。終盤でタイムスリップがキーとなって物語を飛躍させ、SFらしい...
精神分裂病が引き起こす、時間感覚の崩壊。ディック作品おなじみ現実崩壊感の別バージョンな感じ。序盤では描写される火星開拓の行き詰まりがリアルに感じられて面白い。中盤は火星の住民たちと分裂病患者をとりまく人間ドラマが印象的。終盤でタイムスリップがキーとなって物語を飛躍させ、SFらしい驚きの感動を与えてくれる。ディックで一番好きという声が多いようで、確かに他の長編に比べて読みやすかったと思う。ギミックが難しくなく、人物の感情の流れもわかりやすいからだろうか。個人的に自閉症や神経症に縁があるので、そのあたりの著述も興味深かった。
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