ひろみは世界ランキングプレーヤーのジャッキー・ビントからペアを申し込まれ、驚き、戸惑う。 その頃、各国の若手ホープによる国際招待試合が開催されることになり、ひろみの周辺はにわかに騒がしくなる…。 高校生招待試合、ひろみは２回戦でジャッキーの妹・ジョージィと対戦！ 第１セットをおとすも、つづく２セットを連取し逆転勝利！ 「やぶれたあとの態度で 失敗をどう生かすかで その人間の器がわかるのよ」 と、ジャッキーは妹を叱咤した。 まさにその通りだと思う。 ひろみは３回戦で優勝候補のマリア・ヤングにやぶれてしまうが、その闘志が日本庭球協会に高く評価された。 そして、1975年正月、ひろみが渡米への準備を進めている頃、宗方コーチが貧血でたおれてしまう。 病室に呼び出した藤堂に宗方が告げた言葉は、「おれはもう長くない」。 あまりにもショックで信じられなかった！ ひろみにいうこと、すること、すべてに命の重みをかけて、すべてをかくごしてそだてていたなんて！ 「岡　エースをねらえ！」 日記にそう書き残して宗方はたおれてしまった！ すごい！ 感動的な展開！ ただの「スポ魂」マンガじゃなかった！ 「親は子をそだてる　利害をこえて 子は成長し　そだてられたその愛をその恩を　かえそうとする けれどそだてられた愛は恩は　あまりに大きすぎて 生涯かけても直接　親にかえすことはできない だから 子はまた親となり その子に利害をこえた愛をそそぐ それが恩をかえすただひとつの道」 （藤堂貴之） おかあさんの墓前で、何かを悟ったように 「いい朝だ かあさん もういい あのふたり（ひろみと藤堂）の仲をゆるそう」 と言った宗方コーチの横顔がとても優しく見えた。 どうか死なないで！

ネタバレ １９９５年刊行(初出年不明)。宗方の辛い半生と、テニスにかけた情熱、そして、ひろみにかけた想いが、読者に静かに訴えかけられる。第一部完(というより事実上の最終回。だが、この後の物語も思った以上に良いものであったことは付加する)。「一行渡米／岡／エースをねらえ」。この言葉に込められた想いに涙しない者はいないだろう。