近藤史恵さんの様々なジャンルのシリーズ、いつも楽しく読んでいます。猿若町捕物帳シリーズ、シェパード・シャルロットのシリーズ、清掃人キリコシリーズ、整体師合田力探偵シリーズ、白石誓自転車シリーズ、ヴァン・ショービストロシリーズ、孤島もの・・・。「二人道成寺（ににんどうじょうじ）」（2004.3発行、227頁）は、歌舞伎（今泉文吾探偵）シリーズです。

今泉文吾探偵シリーズ 5 歌舞伎役者・岩井芙蓉の家が火事になり、当時、寝ていた妻の美咲が被害に遭い、未だ、昏睡状態のまま。 岩井芙蓉と美咲の夫婦仲は、冷えていて、芙蓉に疑いがかかるが、芙蓉には、アリバイがあった。 名家の御曹司である芙蓉。かたや努力でのし上がった国蔵。ライバル同士で、対照的な二人は、言葉も交わさない。 美咲と、親しくしていた国蔵は、火事の真相を突き止めて欲しいと、今泉探偵に依頼する。 美咲と、芙蓉・国蔵を巡る謎が、今泉探偵によって、明かされる。 小さい頃、日舞を習っていて"お染久松"のお染を踊った事があり、お師匠から"色気が無い"と言われたことが、懐かしく思い出された。

決して殺人が起きて壮絶キッツいものではないです。 ただし、真相が見えてくるとなかなかきついものが ありますしもうね、だれも救われないしいたたまれない。 こういう作品は来るものがありますよ。 しかも決して読みづらい文章でないのよ。 おっそろしいことに。 ある歌舞伎俳優の妻が持つ秘密がテーマともいえる ミステリー。 とらえどころのないこの彼女が その出自ゆえのもろさを持ち、やがて破綻を迎え 崩壊していくさまはきついものでした。 それがなおさら「その人のすべて」 だったらもうどうにも救えないよね。 主人公でも、探偵でも救えないぜ。