『女のはないき 男のためいき』 斎藤茂太 2003年 第三文明社 ジャケ買いならぬタイトル買い。 抜群のネーミングセンス。 アララギ派の歌人、斎藤茂吉を父に持ち 『楡(にれ)家の人びと』北杜夫(きた もりお)の 実兄である精神科医の斎藤茂太によるエッセイ。 今から20年も前の本だが、 早くも今年No.1本候補。 モタ先生の優しい語り口に 大きな文字も相まってあっという間に 読み終えた。 自身の父や祖父母、 妻や兄妹について綴ったところもあり、 個性豊かな斎藤家の面々を知ることができた。 そして、精神科医として 躁うつ病や統合失調症、 自律神経失調症についても 温かい眼差しを向ける。 「自律神経失調症って診断をつけなきゃならない人が現れると、握手をするんだ。おめでとうございます。あなたは芸術家だってね。作家で成功するかもしれない。彫刻家で成功するかもしれない。画家で成功するかもしれない。芸術家になる要素を十分に備えている。だから自律神経失調症と言っても、平気、へっちゃらだ。」 「スポーツとか趣味でストレスを解消してる人いるでしょ。そういう人は大丈夫なんだ。真面目人間はそれができないんで、真っ向からストレスを受けやすい。だからうつになるんだね。」 「ストレスが強い人というのは何事にも100%要求してるんだから、それを少しずつ治してあげる。70%で満足しなさいって言ってるの。ぼくの好きな言葉は「小欲知足」っていうんだ。欲を小さく持って、足るを知る。それを言ってあげるの。みんな病院へ来る人は100%要求してるんだから。健康にしても睡眠にしても、100%完全な健康、100%完全な睡眠じゃないと気がすまない人がここに来るんですから。」 ヒステリーからくる女のはないき、 ストレスからくる男のためいき、 上記した優しい語り口で それらに茂太先生は寄り添う。 誰もが心地よい湯船につかるような、 そんな風に心を温めてくれる本だった。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ⚫︎目次情報⚫︎ まえがき 第一章　割れ鍋に閉じ蓋 
第ニ章　おふくろの血とおやじの血 
第三章　ぼくは大家族主義 
第四章　だれでも少しは精神病 
第五章　男は女にやられっぱなしだけど あとがき ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

歌人・茂吉を父に、作家・北杜夫を弟にもつ精神科医の斎藤茂太さんが、両親そして奥さんとのやりとりを通して男と女について、精神病について書いた１冊。 ・家内はぼくを圧倒している。だから平和なんだ ・人間関係は、つかず・離れず・干渉せず ・父親と母親の役割分担は、母親が検察官で父親が裁判官 　　よく話を聞いてあげるのは母親、イエス・ノーの判断をするのが父親 ・だれでも少しは精神病 ・うつは治る、一笑一若、一怒一老 ・「少欲知足」欲を小さく持って、足るを知る