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商品レビュー
3.5
5件のお客様レビュー
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戸籍管理局に勤める「ジョゼ」氏は、ひょんなことならある女性の戸籍謄本を手にする。趣味の一環でこっそりと集めていた有名人のそれに紛れていた存在に心惹かれ、「その瞬間」は生きていたはずの彼女を探し始める。生まれてからの足跡(記憶)を追うことで、戸籍を扱うという特異性の中で、直面する生と死の矛盾に行き着く。 近代的な制度は生と死を厳格に分ける。遺された者たちの心情や記憶とは別に、死者は死というその瞬間によって社会的な存在ではなくなるのだ。「ジョゼ」氏が辿っていく人探しの途上はそうした近代装置からは捨てられた残滓を紡ぐ旅である。アパートの一番右の老女は「なぜ電話帳で調べないのか?」と問う。羊飼いは自殺者の墓標を勝手に入れ替える。「ジョゼ」氏の経験は、不合理な旅ではあるが、果たしてそう規定しているのは誰なのか。死とは、いよいよ近代的に名付けられた表象の在り方に過ぎないのだ。戸籍管理局という制度それ自体が証明するように、死とはそう規定された瞬間に始まるのだが、それはシンボリックな意味においてそうであることというに過ぎない。 あらゆる名前の中で、大切な存在のことを思うとき、必要なことは、管理された生や死ではない。シンボルを越えた先にある存在そのもの、記憶、その他あらゆる何ものかである。奇妙な物語であり、そして間違いなく悲劇と呼べるのだが、本当の悲劇とはどのような意味においてそうなのか、問い返すきっかけとなる。
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サラマーゴ特有の開業や文字記号のない読みづらい文体で、慣れていない人は最初で嫌になると思う。もしかしたらこれでも、翻訳の段階でだいぶ補正されているのかもしれないが。物語は膨大な数の死の記録が集められる出生管理局の古い戸棚から、ふとある一人の女性の記録に取りつかれたようにその生涯を追う、出生管理局に努める一人の初老の男性の物語。その姿はまさにパラノイア。途中目も当てられない。だが、こうした強烈な描写もまた、サラマーゴ特有。一癖も二癖もある作家だ。
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自分が下したとみられる決断は実は外部にこそ依存していて、その外部のものも更に外部に依存しているのではないかと考えさせられる。 修行を重ねて5年後に再読。
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