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蕨野行
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蕨野行
¥385
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商品レビュー
4.1
13件のお客様レビュー
独特の書き方。最初の…
独特の書き方。最初の方は読みにくかったけど読むにつれ読みやすくなっていきます。
文庫OFF
庄屋の家に後妻として嫁ぎ、お姑さんに暖かく家のあれこれ教わりながら暮らすヌイが、お姑さんに何か秘することがあると感じ、それを尋ねるところから、二人の問答が始まる。 この問答が、お姑よい。ヌイよい。との呼び掛けで始まり、古語のような方言のような柔らかい言葉でつづられる。そして、そ...
庄屋の家に後妻として嫁ぎ、お姑さんに暖かく家のあれこれ教わりながら暮らすヌイが、お姑さんに何か秘することがあると感じ、それを尋ねるところから、二人の問答が始まる。 この問答が、お姑よい。ヌイよい。との呼び掛けで始まり、古語のような方言のような柔らかい言葉でつづられる。そして、その村では60歳になると、家を出て蕨野という丘で、乞食のような集団生活を送るという掟があり、お姑はそれに従うことになると明かされて後、その蕨の衆として生きるようになってからも、延々と、二人のやり取りは続く。それは、離れている二人の心が共鳴してお互いを呼ぶというようなもので、巻末の解説には、「行間から琵琶に似た音の遠間に流れてくる」、「相聞」とも書かれている。苦境で何かを思う時、魂は不思議とリズムを刻むものかも知れない。 これも、巻末に書かれていることだが、いわゆる姨捨の話ではない。飢饉の時には、子を間引き、口減らしのため、嫁を家から出すことも語られる。そんな嫁たちが棄民として彷徨っていても、施しをすれば、村が飢えてしまうとして、捨て置くよう言われる。人肉を食べることを戒める話が語られる。 また、庄屋の家だからといって、蕨野行きや口減らしを免れることになれば、その不満から村が収まらず、庄屋の立場だからこそ、自ら掟を守らないとならないということにも触れられる。一方、嫁家から出された女たちが、人里離れた場所で野人として、生き抜く姿も描かれる。 そう書くと、苦しい物語のように見えてしまうが、実は、逆に、野に繋がった生が、びっくりするほど、おおらかで強いさまが心に染みてくる。 人は、天からの恵みの内、群れて生き、その恵みが限られる以上、その理の中で生きる他ないのだろう。その理に善も悪もなく、ただ、命があるだけなのかも知れない。 巻末の解説も含めて、滋味に富んだ、豊かな、哀しい物語でした。
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独特の表現で初めは驚いたが、お姑よい、ヌイよい、と呼びかけあう会話にだんだんと引き込まれる。 押伏村では60歳になると、村から離れたワラビ野(いわゆる姥捨て山)へ行かなければならない。 ワラビ野衆となったお姑よい達の、死へと向かうはずの生活が凄まじいのだが、滑稽な明るさもあり逆に...
独特の表現で初めは驚いたが、お姑よい、ヌイよい、と呼びかけあう会話にだんだんと引き込まれる。 押伏村では60歳になると、村から離れたワラビ野(いわゆる姥捨て山)へ行かなければならない。 ワラビ野衆となったお姑よい達の、死へと向かうはずの生活が凄まじいのだが、滑稽な明るさもあり逆に生命力を感じる。 非常に心に残る作品です。
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