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知の冒険者たち
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杉田玄白と言えば、オランダ語の医学書を『解体新書』という形で日本語でまとめた江戸期の先進知識人として広く知られている。その彼が晩年、蘭学創生期における学者達の世界を書き留めたとされるものが『蘭学事始』だ。既に岩波文庫から現代語訳が出版されているが、著者はその訳の不満な部分を補っ...
杉田玄白と言えば、オランダ語の医学書を『解体新書』という形で日本語でまとめた江戸期の先進知識人として広く知られている。その彼が晩年、蘭学創生期における学者達の世界を書き留めたとされるものが『蘭学事始』だ。既に岩波文庫から現代語訳が出版されているが、著者はその訳の不満な部分を補った訳出を試みた。この新訳と古文本文が、本書の前半部を占めている。長崎通詞らを通して蓄積されていった知識を用いながら、新しい学問を切り開いた杉田の蘭学への思いが伝わり、読み物としてもなかなか面白い。 一方で『蘭学事始』は、箒で掃いたゴミの様子から「鼻」を形容する言葉の意味を思いついた、というような今世で知られている杉田の逸話の出所となっている。だが、この杉田の記述には疑問な点、事実関係の食い違いが多く見られる物となっており、筆者は史料批判を的確に加えていく。更に写本の版による相異や伝わる書名の流れを通じて、『蘭学事始』の歴史的変遷と意義について考察する部分が本書の後半部となる。書誌学・文献学の手法に基づいたかなり専門的な話となるため、こちらはやや退屈に感じられるかも知れない。 だが原典は原典、注釈本は注釈本、という分冊が当然基本となるなかにあって、原典・現代語訳・注釈・批判まで一冊でまとめた本書の形態はユニークだ。読みやすさという点ではなかなかのものなので、他の古典もこうした本が出てくるとありがたい。
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