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父を売る子・心象風景
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父を売る子・心象風景
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商品レビュー
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4年くらい前に買ったんだけどぜんっぜん進まなかったのを漸く読み終えた。「熱海」「スプリングコート」「父を売る子」の3作は、筆者の家庭、とりわけ父親について書いた私小説のようなものであるが、最後の「父を売る子」だけは手前の二作を清算するために書かれたようなふしがある。父の死にショッ...
4年くらい前に買ったんだけどぜんっぜん進まなかったのを漸く読み終えた。「熱海」「スプリングコート」「父を売る子」の3作は、筆者の家庭、とりわけ父親について書いた私小説のようなものであるが、最後の「父を売る子」だけは手前の二作を清算するために書かれたようなふしがある。父の死にショックを受けて、父をテーマにした小説(まさに父を売る小説である)を書く気も失ってはいながら、父の四十九日には「こんどは急に一家の主人公になったのだから、ひとつ大いに威厳を示してやろうなどと思い、その日に云うべき言葉の腹案と態度のことを今から夢想している。」と締めくくる。この据わりの悪さは何とも良い。好みだ。こんなどうしようもない話ばかり書いているのかと思うとそうでもなく、牧歌的享楽主義者の大奮闘を描く「酒盗人」や、他愛の無い子供との触れ合いと大人気ないおかしさがじんわりと残る「泉岳寺附近」、ほがらかな夫婦の間に刺す一筋の不安を残して終わるミステリカルな「心象風景」など、なかなかバリエーション豊富な収録作で楽しかった。「淡雪」は、ゾラに流れを組む(少なくとも「蒲団」などよりは!)正統派自然主義文学の匂いを纏う良い小説である。是非ご一読を。しかしこれまた高いんだなあ。1100円すんだ。岩波から出ている「ゼーロン・淡雪」の方が安いかもしらん。
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