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硝子障子のシルエット
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硝子障子のシルエット
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商品レビュー
3.5
2件のお客様レビュー
サブタイトルに「葉篇小説集」という、あまり聞き馴れないことばがつかわれていますが、30編のいわゆる掌編小説をまとめた本です。 全体は三部構成となっており、「三区分に配置したのは、Ⅰに夢と現のさだかでないもの、Ⅱに幼少年時や戦中戦後に素材を求めたもの、そしてⅢになかんずく東京都江...
サブタイトルに「葉篇小説集」という、あまり聞き馴れないことばがつかわれていますが、30編のいわゆる掌編小説をまとめた本です。 全体は三部構成となっており、「三区分に配置したのは、Ⅰに夢と現のさだかでないもの、Ⅱに幼少年時や戦中戦後に素材を求めたもの、そしてⅢになかんずく東京都江戸川区小岩町での三年間の生活にだぶらせてその渦中で書いたものを、それぞれ区別したかったからだ」という著者自身の説明がなされています。 第一編に収められている4作品は、いずれも寓意性の強い作風で、不思議な読後感をのこします。第二編および第三編の諸作品は、私小説的な雰囲気があり、とくに第三編は著者の主著である『死の棘』にえがかれたトシオとミホの夫婦と二人の子どもたちの家庭に起こった、日常の風景が切りとられています。
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死の棘の作家という印象がこの一冊により、好い意味で変わった。島尾が第三の新人に括られることにこれまでしっくりきていなかったが、これからはちゃんと頷けそう。ただし他の作家に比べ、かなり精神の動きを言葉で表そうという意志を感じる。現象に託すよりも、自分の心の動き、見え方などをよく書いている。そういう意味で死の棘の作家なんだとちゃんと思える。 一作品が四〜十ページなので読みやすい。集中したままページを捲ると、もう終わりなのが分かる。あと数行で終わることがわかると、その数行を読むのをがんばろうと思う。一編、一編、繰り返す。 秋山駿が解説を書いている。これがかなりいい。彼の文章はもはや評論ではない、という先生の言葉がよく分かった。でもそれがいい。島尾へ絡んできたという秋山の話がとても心にすとんと落ちた。
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